おまめの戯言

関西で社畜の日々を送る25歳干物女です。麻雀のことや仕事のことを呟きます。初心者ということを念頭にご覧ください

偏愛ストラテジーとファンマーケティング

近年「ファンマーケティング」という単語がプチブームになり、本棚でも結構並んでいた佐藤尚之著の『ファンベース』。ファンとは?それをマーケティングに組み込む意義とは?

 

人口が減少し母数が減っている以上、多数へ爆弾投下するマスコミュニケーションではなく、個人を重視する=個人にファンになってもらうという考えは今後ますます拡大すると思います。

 

私自身、オタク歴うん年なので、オタクがいかに推しにお金を貢ぐか目の当たりにしています。堅実消費と言われる世代が、何万円というお金を一日に消費していく姿を見ると「お金を支払う価値があると感じるものだけ消費する」という至極当たり前の結論に至ります。

 

いかに商品やサービスに価値を感じてもらうか。情緒と機能の双方から働きかける必要がある。前者を満たすものが「ファンマーケティング」なんですね(∩´∀`)∩

 

本書の特長

今日の一冊『偏愛ストラテジー』の特筆点は、プランナーとしての「伝え手」目線と一ファンとしての個人的な「受け手」目線の双方から見たファンマーケティングの方向性について記載されている点です。

 

本来「受け手」目線は主観的な感覚に寄ると思います。実際、本著の「受け手」目線は著者の経験であり、論文で書くにはファクトが不足しています。しかし、だからこそファンだからこそのリアルな気持ちや、そこから導き出される結論に重みを感じます。

偏愛は個人の感情と非常に深く結びついています。「どう見られたいか」とか「みんなが好きだから」ではなく、「私が深く好きだから」ということが基本にあります。世の中には便利なサービスも、素敵な商品も星の数ほどありますが、私のことを肯定し私のことを分かっていると納得できるものは少ない。だからこそ愛着がわき、偏愛に結びつきます。

→著者は某バンドの曲を聞いて「私を分かってくれている!」という共感を持ちファンになったという経緯があります。

 

私自身、数年前まで何もファン活動を行っていなかったので、ファン独自の欲求や想いを知らない状態でファンマーケティングを行ってもなかなか成功しないだろうな…と思います。本書は「ファン」特有の空気感を知りたい人向けだと思いました。

 

他社事例や定量調査に基づくファクトを読みたい方は、佐藤尚之著の『ファンベース』の方がおススメかもしれません。よりファンに寄り添った、近い目線を知りたい方は本書をおススメします。

 

本書はファンの心に火をつけるスイッチを6つに分けて紹介しています。

・よりそいスイッチ

・特別扱いスイッチ

・言霊スイッチ

・仲間スイッチ

・自分ごとスイッチ

・拡散スイッチ

 

それぞれ作者の経験談マンガを挟みながら受け手・送り手双方の視点を明確に分けて理論を展開しています。但しコトラー大前研一などマーケティングフレームワークに沿った内容というわけではないので、結構好みは分かれると思います。

 

ファンの定義とはなにか?

「送り手の次に期待している人」がファンである。

…例えば、とあるミュージシャンが好きで昔はよく音楽を聴いていた。しかし最近の曲は特にチェックしていない場合は、本書のファンの定義からは外れます。

 

「送り手」と「受け手」双方が幸せで、長期間つながりを持ち続ける関係でないと、どちらも続かない。「次の新曲は何かな」「ライブいつ開催するんだろう」など、未来に対して偏愛を持っている人をファンマーケティングとして刈り取るべきと書いてあります。

 

逆に、購入経験がなくてもSNSをフォローしてチェックしていたり、お金をまだ消費していなくても「送り手の次に期待してくれている人」はファンとしての潜在性が高い人たちです。

 

通常のマーケティングでは購入者調査をもとに考える傾向にあるので、未購入者かつファン見込み層に対するアプローチは意外と見落としがちかもしれません。

 

……すごく納得の内容ですが、全体的に企画書に落とし込みづらいんですよね。『ファンベース』にもありましたがファンマーケティングはファクトが出しづらい以上数字でのKPIが算出しにくいというか…。すごく腹落ちするのに……。

 

とかくファンの心理が知りたい方にはおすすめの一冊です(*'ω'*)